考える人 2017年02月号「ことばの危機、ことばの未来」
特集が気になって、刷新後初めて購入。
色々なところで書かれているように、執筆陣がありがちな人選で内容も薄くなってしまっていた。
表紙も以前の写真を使ったものの方が美しくて好きだ。
(ちなみに私が大好きな号はこれ↓。川上弘美さんが色っぽく読み応えも十分。)
とはいえ、歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリ氏へのスペシャルインタビューはとても面白い。著書を読みたくなった。
なぜ人間がその他の動物を抑えて、繁栄することができたのかについて。
人間がユニークなのは、見ず知らずの関係であっても大人数で柔軟に協力し合えることです。では、人間にはなぜそんなことができるのでしょう。本の中で私が示した解答は、言語であり創造力であり、架空の物語を作り上げ、みんなが同じ物語を信じられるようにする能力です。みんなが同じ物語を信じることができれば、同じ規範や価値観に従って協力できるのです。何であれ大規模に人間が協力し合うものを考えてみると、宗教、政治、経済・・・あらゆる活動分野で何らかの架空の物語を見つけることが出来ます。神、国家、金銭・・・こうした物語を共有することが人間特有のユニークな能力です。(p.74)
架空の物語を共有する、という人間ならではの能力については、平田オリザ氏も言及していたように記憶している。舞台なんてまさに”無いものを信じ込ませる”ものだものな。
大事なのは現実と物語を峻別すること。それには、様々な方法がありますが、私にとっていちばん良い試金石は「痛み」 があるかどうか。何が「現実」で何が「物語」かを識別するためには、痛みを感じるかどうかを考えてみる。例えば、金は痛むか、国家は痛むか。敗戦によって国家は苦しむと思うかもしれないけれど、痛むのは国民であって国家ではない。日本が第二次世界大戦に負けた時、苦しんだのは国家ではなくて日本の人々です。つまり、人や動物は痛むから現実だけれど、金や国は発明された物語でしかない。人間にとっての良い物語とは、世界の痛みを減らすものです。(p.76)
技術を恐れる必要はありません。技術の進歩にはメリットも多いのですから。大切なことは技術を私たちの役に立たせることであって、私たちが技術の奴隷にならなければ良いのです。そのためにも、自分自身をよく知ることが大切です。(p.77)
そして、『死の棘』『狂うひと』を巡って梯久美子さんと中島京子さんの対談で、
ノンフィクションについて
中島:でも、ほとんどの人の人生は、誰にも知られないまま終わりますよね。だけど、作家のような人だけが声を出せるという不均衡がそもそもあるわけです。だから、作家は誰にも書かれずに埋もれてしまうものをすくい上げるのが仕事だと思うんです。(p.129)
というくだりは、自分の仕事の存在意義とも重なった。
全国森ガイドなど、思いがけず興味深い記事に出くわすのも雑誌ならでは。
相変わらずマイケル・エメリック氏のエッセイは胸に響くものがあった。
アメリカの大統領選挙をあんな風に書き始めるなんて。
肩を落として気の抜けた言葉を交わし、スキューバーダイバーが減圧症を予防するためになるだけゆっくり水面に浮上していくように、あの一瞬の異様な親密さから徐々に身を引き、それぞれの車に乗り込んだ。(p.152)
くどくはあるけれど、このように多面的に日常のやり取りが表現できる感覚の鋭さを学びたい。
そして、いつか実際にお会いしてみたい。(情報が少なすぎるよ・・・)