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2016年読んだもの観たものなど

読んだ本 23冊

 永い言い訳/ことり/昨夜のカレー、明日のパン/土佐堀川/リアル行動ターゲティング/異類婚姻譚/死んでいない者/悲しみの秘儀/東京という主役/乳房の文化論/結婚式のメンバー/私のなかの彼女/へろへろ/断片的なものの社会学/vanitas002/物流ビジネス最前線/ラストワンマイル/コンビニ人間/ホームスイートホーム/問題は英国ではない、EUなのだ/服従/となりのイスラム/建築家の清廉

 1.「断片的なものの社会学」岸政彦(朝日出版社

  取材する中で、書きたい趣旨とは関係ないけれど、その関係ない話が最後まで印象に残っていたりする。そんな行き場のないエピソードにいくつも出会ってきただけに、岸さんの着眼点が心に響いた。日の目を見ることのない愛おしいエピソードの切れ端。でも、それが人間の本質で真実。気持ちが揺さぶられたくせに、芥川賞候補者リストに岸さんの名が挙がっていてもこの本と結びつかなかった。己の衰えを感じた。

 2.「悲しみの秘儀」若松英輔(ナナロク社)

 大切な親族を失われた方ということで、読む前からシンパシーを感じていた。自分の気持ちを書き記すこと。思ったように言語化できなくても、それを世に生み出すことが出来るのは自分ただ一人だということ。ブログをまた立ち上げたのも、この本に触発された部分がある。婚前旅行を終えた矢先に大失恋した知人が書いたブログ。きっとあまり読まれていないだろうこの日記を数年後に私が見つけ出し、感じ入るものがあったのも、その時に不安定な気持ちを吐き出した行為があったからこそ。「愛するということ」をなぞるような感覚にもなった。

 番外編:「あひる」今村夏子(「たべるのがおそい」より)

 「こちらあみ子」で強烈な印象を残した今村夏子さんの新作が掲載されていることで買った「たべるのがおそい」。改めて文庫でも読むつもりなので番外編として挙げる。静かだけど不穏な空気感。書かれていることはシンプルなのに、不気味さを感じさせる世界観が素晴らしい。「コンビニ人間」よりも俄然こちらを推したいし、小川洋子さんが推していたのもすごくよく分かる。「コンビニ人間」しかり「異類婚姻譚」しかり「スクラップアンドビルド」しかり、最近の芥川賞は突飛な設定で軽いタッチの作品が多いように感じる。その点「火花」は純文学の佇まいがしたし、「あひる」もそう。シンプルでありながら心にしっとりと余韻が残る作品が賞を取ってほしい。

 

 観た映画 22本

 ニュースの天才/グッド・ストライプス/アメリカン・スプレンダー/フレンチアルプスで起きたこと/キャロル/ザ・トゥルーコスト/これが私の人生設計/ルーム/ハッピーアワー/シング・ストリート/クレイマー、クレイマー/はじまりのうた/パシフィック・リム/遠距離恋愛/インセプション/永い言い訳/シン・ゴジラ/君の名は。/犬神家の一族/聖の青春/めまい/レナードの朝

 1.「ハッピーアワー」濱口竜介

 総じてみんなミスコミュニケーション。言葉を交わしたとしても真に分かり合えることなんてない。そんな後味は「親密さ」と同じ。でも、そんなに分かり合えないものなのかな?すれ違ってしまうものなんだろうかと不安を覚えたのは、主人公たちの年齢と私が近いからなのだろうか。「親密さ」での交わらない電車は、分かり合えないけど前進するという未来的希望に映ったけれど、今回は切なさが先に立つ。

 2.「シング・ストリート」ジョン・カーニー

 単純に音楽が楽しい、主人公たちが可愛い!音楽愛にあふれている作品。「Drive It Like You Stole it」のシーンは曲の魅力とあのキラキラした切ない空想が合わさって涙がこぼれた。広島のサロンシネマがこちらも映画愛にあふれていて素晴らしく、それも含めて良い映画体験だった。

 3.フレンチアルプスで起きたこと 

 ああ、いじわるな映画、という印象。でもこういった普遍的な人間模様を描いた作品は大好き。

 

 その他

 今年は短歌に挑戦したり、香木の香りを聞く「聞香」やアロマオイルの調香体験など、自分の関心が絞れてきた一年だった。関心があるのは、言葉、天然の香り。短歌教室にはなかなか顔が出せないけれど、自分の感傷的な部分をこんなに表に出して良いのか、という開放感が気持ちいい。そして、それを受け止めてくれる人たちがいることも。調香体験では、「うっそうと緑が茂る公園」というイメージを伝えただけで、「陽よりも陰、低体温、子供っぽさは一切いらないということですね」と好きな世界観を理解していただけて驚いた。言葉の選び方にしろ、香りにしろ、感覚を研ぎ澄ませることは物事に対しての解釈の幅も広がっていく。これからもどんどん磨いていきたい。